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健康寿命と矯正治療

皆さま、こんにちは。
春の訪れが早く、桜の開花も昨年よりも6日も早く発表されました。
新型コロナウイルスを巡る規制緩和も広がり、通常とは言えないまでも3年ぶりにお花見が楽しめる機会が増えそうです。
まだまだ季節の変わり目ですので、体調を崩されないようにご自愛ください。

日々診療していると近頃、矯正治療を希望される成人の患者さんが増えてきたように感じます。
コロナ禍でのマスク生活では窮屈な生活を余儀なくされていましたが、口元をマスクで隠しているこの機会に、今まで二の足を踏んでいた矯正治療に踏み切る方が多いのではないかと思います。
そこで今回は健康寿命の側面からみた矯正治療の利点をお話したいと思います。
矯正治療は審美的な問題を解決することはもちろんですが、かみ合わせを治すことによって高齢になっても歯を残し健康寿命の延伸にもつながると考えられます。

健康寿命

2019年の平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳です。
一方、健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことをいい、2019年の健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳となっています。
平均寿命と健康寿命の差は10歳以上あり、健康寿命の延伸が生活の質の向上につながると考えられます。

皆さんは「8020運動」という運動はご存じでしょうか?
日本歯科医師会や厚生労働省が提唱している運動で、80歳になっても自分の歯を20本以上保とうという運動です。
高齢者になった時に自分の歯を残し健康な生活を送ること目的としています。
(提唱した当初(平成元年)には8020達成者は全体の10%に満たないとされていましたが、現在では50%以上が達成しています。)

8020運動

「80」は、提唱当時の日本人の平均寿命(平成元年)、「20」は「自分の歯で食べられる」ために必要な歯の数を意味します。
今までに行われた歯の本数と食品を噛む(咀嚼)能力に関する調査によれば、だいたい20本以上の歯が残っていれば、硬い食品でもほぼ満足に噛めることが科学的に明らかになっています。
食物を満足に噛めるということは健康寿命にも関係していて老後健康な歯が多いほど認知症や寝たきりになるリスクが低くなるとこが分かっています。

東京都文京区と千葉市で8020達成者を精査したところ、どちらの調査でも「不正咬合」である反対咬合と開咬がいなかったとの報告があります。
反対咬合や開咬は不正咬合の中でも特に奥歯に負担がかかるかみ合わせで、長年負担がかかっていると奥歯から喪失していき残存歯の減少につながると考えられます。

不正咬合

歯並びや噛み合わせの状態が良くない状態の総称。
歯の位置や歯列弓、上下の噛み合わせなどから起こり、放置すると日常生活に支障が出る場合がある。
正常ではない咬合(かみ合わせ)のことです。

不正咬合の種類

叢生(そうせい):歯がアゴに入りきらないでガチャガチャに生えている状態 歯がならぶ場所=骨の大きさとそれぞれの歯の大きさとの間のアンバランスでこのようになります。
歯みがきの時に歯ブラシが行き届かずに汚れが残りやすく、虫歯や歯周病の原因となります。

反対咬合(はんたいこうごう):下の歯が上の歯より前に出ている噛み合わせです。
上下の前歯の傾きに問題がある場合と下のアゴが大きすぎたり上のアゴが小さすぎることによる場合とがあります。

開咬(かいこう): 噛んできても、特に前歯が噛み合わない状態です。
前歯で食べ物をうまく噛みきることができないだけでなく、正しい発音ができないことが多いです。

上顎前突(じょうがくぜんとつ):上の前歯が強く前に傾斜していたり、上の歯ならび全体が前に出て噛んでいます。
また下のアゴが小さかったり、後ろにあることで見かけ上、出っ歯にみえることもあります。
この状態では、口を楽に閉じることができませんし、顔のケガで前歯を折ったり、くちびるを切ったりしやすいです。

矯正治療によって歯並びが良くなれば磨きやすくなり、歯を失う2大要因である、虫歯や歯周病のリスクを下げることができると考えられます。
また、上顎前突による前歯の破損のリスクを下げることや反対咬合や開咬のような奥歯に負担がかかるような不正咬合を改善することによって高齢者になった時の歯の喪失のリスクを下げることが期待できると考えられます。
歯並び、噛み合わせを治すことは歯の健康を保ち、高齢者になった時に健康な歯で物を食べられることによって、健康寿命の延伸にも深く関わってくると考えられます。
もちろん矯正治療にはメリットだけではなくデメリットもあり、矯正治療をはじめるためには詳細な検査をして個人個人にあった治療方針をたてて進めていく必要があります。

そろそろマスク生活も終わりが来そうな時期にはなってきましたが、この機会に一度ご自身の歯並びに関して歯医者に相談してはいかがでしょうか。

矯正歯科医 片岡 烈

(参考文献)
・日本矯正歯科学会HP
・e-ヘルスネット(厚生労働省)

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