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星陵日記

口が乾く 口腔乾燥症

皆さま、こんにちは。
日差しが春の訪れを感じる季節となりました。
同時に花粉などの影響により乾燥によるお肌トラブルに悩まされてる時期でもありますね。
今回はそんな乾燥にまつわるお話をさせていただきたいと思います。

「最近お口の中が、 乾いたな…」 と感じることはないでしょうか?
現代では高齢化社会に伴い、 口腔乾燥感を主訴に来院される患者様が増加しています。
疫学的には、 全高齢者のうち12 ~39% の罹患率があると言われています。
次の図は年齢別口腔乾燥自覚度を示します。

では、 実際に口腔乾燥症とはどういったものなのでしょうか?

●口腔乾燥症の概念と症状

口腔乾燥症とは一般的に「口腔内の水分減少により、 直接的または間接的におこる一連の口腔内におこる不調」 と定義されます。
臨床的には、 唾液の分泌量そのものが低下している唾液分泌低下症(SGH) と唾液分泌量にかかわらず 口腔乾燥感を感じるものdry mouth の大きく二つに分けられます。
症状として直接的なものでは口腔粘膜の感覚異常、 味覚異常、 唾液の粘稠感などです。
また、 間接的なものでは飲み込みにくさ、 噛みにくさなど様々です。
それらによって、 口腔乾燥でQOL が低下する可能性は否定できません。

●口腔乾燥症の原因

口腔乾燥症の多くが多因子性疾患であることから、 口腔乾燥症と断定することは難しいこともあります。

・加齢により生じたもの
・高血圧症、 糖尿病、 シェーグレン症候群、 自己免疫疾患などの全身疾患
・唾液分泌に影響を及ぼす抗ヒスタミン薬、 抗うつ薬、 抗精神病薬
・放射線治療による晩期障害
・ストレス
・水分減少

などです。
また、 昔に比べ柔らかい食べ物を好んで食べる風潮から、 咀嚼時間が減り口腔周囲の筋肉の衰えなども原因として挙げられます。

●診査

ムーカス試験

舌の表面とセンサ部分が平行になるよう押し当て3 回測定することで、 口腔湿潤度を測ります。

ガムテスト

10 分間ガムを嚙み、 分泌された唾液を容器に吐き出し計測します。

サクソンテスト
乾燥したガーゼを2 分間一定の速度で噛み、 ガーゼに吸収される唾液の重量を測定して唾液の分泌量を測定します。
その他の検査として、 唾液腺シンチグラフィー、 唾液腺造影検査などがあげられます。

●治療

口腔乾燥症による治療法はそれぞれの原因に対する原因療法が主体ですが、 それでも改善が見込めない場合では口腔湿潤剤を使用するなど対症療法も視野に入れ対応することもあります。
また、 唾液腺マッサージなどのセルフケアを行い、 直接刺激を与えることで効果の増大も期待できます。

耳下腺:耳の横を手指で後から前に向かって回すようにマッサージします。

顎下腺:親指の腹で舌を持ち上げるように押します。

舌下腺:指を下のアゴの骨の内側の柔らかい部分にあてて耳の下からアゴの下までを5ヶ所くらいを1~2秒押します。

原因に対する処置法は、

1.薬物性唾液分泌量の低下
薬が唾液分泌の低下を引き起こすことも多いです。
しかし、 明らかに服用している薬が原因だと分かっていても独断で中止するのではなく主治医と相談して、 服用薬の変更または、 量の調節を行うようにします。

2.ストレス
ストレスが原因の場合は、 心理士などによるケアが対象となります。
また、 心理的要因から薬が処方された場合、 唾液分泌量と関わりがあるかなど、 主治医と相談する必要があります。

3.唾液腺の器質的障害((放射線晩期的影響)
放射線により、 唾液腺そのものが破壊されてしまうことがあります。
その場合、 口腔湿潤剤などによる対症療法が基本となります。
また、 上記でも説明をしたように、唾液線の一部が機能している場合は、 セルフケアによる唾液腺マッサージが有効となります。

●最後に

口腔乾燥症により、 美味しい食事や友人との会話ができず、 個人のQOL に支障をきたしていませんか?
少しでも気になる場合は、 お近くの歯科医院を受診されることをおすすめします。

歯科医師 永井 綾香

参考文献
九州歯科大学生体機能学講座老年障害者歯科学分野 口腔乾燥症の病態と治療 柿木保明
ドライマウスと環境因子 日本歯科大学生命歯学部口腔外科学講座 日本歯科大学東京短期大学

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歯科と栄養の関わり

皆さま、こんにちは。
寒さが一段と厳しくなり、冷え冷えとした日が続いております。
冬は体調管理が難しいですが、温かい飲み物や栄養バランスの取れた食事でお体を温めて、お仕事や日常生活でお疲れが溜まらないよう、この寒い季節、どうぞ温かくお過ごしくださいませ。

さて、今回のテーマは「歯科と栄養の関わり」で少しお話させていただこうと思います。
我々にとって食事とは常に日々生きるために必要な要素であり、娯楽の1つとなっています。
いかに食事によって幸せを得つつ、自身の身体の調子を整えるかが、年を重ねるにつれてより大きな課題となっていくのではないでしょうか。
栄養バランスや量の話ですと、生活習慣病も大きなテーマですが
高齢化が着々と進んでしまっている現代日本では「高齢者の低栄養」についての話もよく耳にするかと思います。

そこには上図のような負のサイクルを代表例として、

・「栄養のことはわからないし特に気にしていない、好きなものだけ食べたい」
・「病気などで気力体力が落ちてしまい、食事で疲れてしまう」
・「味を感じにくくなった」
・「食べたくてもうまく噛めない、飲み込めない」

等々といった様々な原因が存在しています。
これらの全てを歯科が解決することは不可能です。
しかし、歯を含めたお口の環境と食事、栄養は切っても切れない関係ですので、歯科医師は一つの視点として、他の職種の方々と協力しながら一人一人の楽しい食事を支えていく取り組みを進めています。

実際に国の制度としては現在どのような動きがあるのでしょうか。
厚生労働省は、「来年4月(2024/4)の介護報酬改定に向けて、利用者のリハビリテーション、口腔ケア、栄養管理の推進を図る方策を検討していく」と発表しています。
在宅でも施設でも栄養管理を必要とする利用者はまだまだ多いことから、
リハビリ、口腔ケア、栄養管理を一体的に運用することが、自立支援・重度化防止の効果を更に高めることができる、と期待されています。
今後より一層、介護施設や居宅サービスといった環境下において歯科と栄養が関わる機会が増え、より適切な支援が可能になると予測されます。

先程も述べた通り、高齢者の低栄養に対して、歯科のみで解決できる範囲は限られてしまうため、多職種での連携はもちろん必須になりますが
もし、まず歯科で低栄養について注目するとなると

・身体的・社会的状況の把握
 (既往歴、現在治療中の疾患、体調や自立度、生活環境など)
・経時的な体重変化
 (最低1か月単位での変化を見ることで栄養状態の簡単なスクリーニングが可能)
・食事状況の把握
 (どんなものをどれくらいの量食べているか、誰が食事を用意しているか、
食事中にムセが起きていないかどうか)
・食形態について適切かどうかの判断
 (各々がそれぞれの機能に適した形態か、安全においしく食べられるか)
・その他、口腔内の環境で食事摂取に悪影響を及ぼす因子
 (う蝕や歯周病はないか、義歯は疼痛なく適切に使えているかどうか、乾燥していないか)

等といった情報が必要になってくるかと思います。
ここからまず大きな問題となっている因子を歯科的な視点で捉え、必要な情報を医師や管理栄養士などといった他の職種と共有し、解決策を模索するといった流れになります。

いかがでしたでしょうか。
省いてしまっている点はございますが、歯科が栄養に関わる仕事も担っており、徐々に活躍する場が増えていきそう、ということをなんとなく知っていただけたらと思い、書かせていただきました。

今回は低栄養についてのみ書かせていただきましたが、生活習慣病等の偏った食事や食べすぎにもお気をつけください。
何か質問等ございましたら、お気軽にご相談ください。

歯科医師 白井 健太郎

参考文献:歯科と栄養が出会うとき. 菊谷武・尾関麻衣子.2023-10-29
https://i.care-mane.com/news/entry/tanaka202300919
https://i.care-mane.com/news/entry/2023/09/20/132209
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/health_promotion/pdf/health_promotion_180402_0005.pdf

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顎が痛い!顎関節症のお話

皆様こんにちは。
秋も一段と深まり、紅葉の美しい季節となりましたが、皆様お変わりなくお過ごしでしょうか。
さて、気候も過ごしやすくなり食べ物も美味しい時期ですが、ご飯を食べたり口を開けた時音がする、痛いと感じることはないでしょうか。
今回はそのような症状が出る疾患の一つである、顎関節症についてお話しさせていただければと思います。

1)顎関節症の概念

顎関節症は、顎関節や咀嚼筋の疼痛、顎関節雑音、開口障害ないし顎運動異常を主要症候とする障害の包括的診断名です。
その病態は咀嚼筋痛障害、顎関節痛障害,顎関節円板障害および変形性顎関節症です。

2)顎関節症の病因

顎関節症の発症メカニズムは不明なことが多いといわれています。
日常生活を含めた環境因子・行動因子・宿主因子・時間的因子などの多因子が積み重なり、個体の耐性を超えた場合に発症するとされています。
ここでお話しするのが、個別対応の重要性です。
年齢、性別、社会背景などによって発症因子やリスク因子が全く異なります。
例えば、近所に、すごくおいしいパン屋さんができたので、朝、昼、晩とフランスパンを食べ続けたら、痛くて口が開かなくなった。
あるいは、

・あごにいいと聞いて
・ぼけの予防によいと聞いて
・体に良いと聞いて

起きている間はずっと一日中硬いガムをかんでいました。
などといったことはないえしょうか?
このような医療面接を通じて状況を把握することが、管理、治療を行う上でKey pointとなってきます。

3)顎関節の罹患状況

「平成28年歯科疾患実態調査」をもとに顎関節に何らかの症状がみられる患者数を推定すると約1900万人となります。
癌は高齢になるほど患者数が増えますが、顎関節症は高齢になると患者数が減ります。
すなわち疫学的には、顎関節症は予後の良い、加齢とともに自然治癒する疾患と言えます。
ただし予後が悪く慢性化する患者も一定数存在します。

4)病態分類と治療について

・顎関節症の病態分類(2013年)

【○咀嚼筋痛障害(Ⅰ型)】

治療
行動改善(硬固物咀嚼制限、長時間咀嚼制限、TCHなど不良習癖の除去)
物理療法(咀嚼筋マッサージ)
運動療法(開口ストレッチ)
温熱療法
口腔内装置(オクルーザルアプライアンス)
※TCH(歯列接触癖のことがあり、上下の歯を持続的に接触させることを言う)

【〇顎関節痛障害(Ⅱ型)】

治療
行動改善(硬固物咀嚼制限、長時間咀嚼制限、TCHなど不良習癖の除去)
運動療法(顎関節可動域訓練:開口ストレッチ)
非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDS)
適応外使用(「顎関節症の関節痛」に対して)
ロキソプロフェン(ロキソニン)
ジクロフェナック(ボルタレン)
ナプロキセン(ナイキサン)
変形性関節症なら
アセトアミノフェン(カロナール)など
※NSAIDS(非ステロイド性抗炎症薬の略で解熱鎮痛薬と同義語として用いられる)

【〇顎関節円板障害(皿型)】

・復位性
治療
行動改善(硬固物咀嚼制限、長時間咀嚼制限、TCHなど不良習癖の除去)
運動療法(顎関節可動域訓練:開口ストレッチ)
顎関節徒手的授動術(マニピュレーション)保険適応
に加えて
痛みを伴う場合はNSAIDSを投与
すごくラウドな雑音(大きな音)は内視鏡による処置も検討します。
音が鳴るのが怖くて大きく口を開けないなどといった行為は逆効果となります。

・非復位性
治療
行動改善(硬固物咀嚼制限、長時間咀嚼制限、TCHなど不良習癖の除去)
顎関節徒手的授動術(マニピュレーション)(顎関節円板の整位が可能な症例では試みる)
整位が不可能な症例では、顎関節可動域訓練(モビライゼーション)
痛くてもリハビリなので頑張って開けましょうと応援します。
難治の場合は内視鏡手術も視野に入れます。

【〇変形性顎関節症(Ⅳ型)】
臨床症状として、顎関節痛、開口障害あるいは間接雑音のいずれか1つ以上を呈するので、治療は他の病態に対する治療に準じます。

ここまで顎関節症についてお話しさせていただきました。先にも述べたように顎関節症はきちんと管理することで治癒していく可能性が高い疾患です。
そのため、過度に心配する必要はありませんが、あまり改善が見られない場合、悪化しているような場合には一度早めの受診をお勧めします。

歯科医師
永井 綾香

参考文献
顎関節症の指針2020(一般社団法人日本顎関節学会編)
がんの統計2022(公益財団法人がん研究振興財団)

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口腔アレルギー症候群

皆さまこんにちは。
時折感じるさわやかな風に、秋を感じるようになりました。

秋にはコスモスや金木犀など、季節の花も多く見られる時期ですが、実は秋にも花粉が飛んでおり、「秋の花粉症」を患っている方もいらっしゃるかと思います。
今回は、花粉症との関わりが注目されている「口腔アレルギー症候群」についてお話ししようと思います。

●口腔アレルギー症候群(OAS:oral allergy syndrome)とは?

1987年 Amlotらにより提唱された概念であり、何らかの食材によって口腔内や咽頭にアレルギー反応が出る病気とされています。
果物や生野菜に含まれるアレルギー反応の原因となるたんぱく質(アレルゲン)が、口の中の粘膜に触れて起こり、体内のIgE抗体(アレルギー物質に対する抗体)が関係しています。
また、花粉症の人が果物や野菜を食べた場合に際に生じるものを、『花粉-食物アレルギー症候群(PFAS:pollen-food allergy syndrome)』と呼ぶようになりました。

●どんな症状が起きる?

果物や生野菜を食べた直後から数分以内に唇や舌、口の中の粘膜、咽頭にかゆみやピリピリとしたしびれ、むくみなどが誘発されます。
ごく稀に、アナフィラキシーショックと呼ばれるショック症状を起こすこともありますが、多くは食後しばらくすると自然に消えるものがほとんどです。

●花粉症と食べ物にはどのような関係がある?

花粉症は、口腔アレルギー症候群の発症と同じく、目や鼻に入ってきた花粉からアレルギー反応の原因となるタンパク質(アレルゲン)が出されることで、目の痒みや鼻水といった症状を引き起こします。
花粉と食べ物の一部の間で、このアレルゲンの構造が非常に似たものがあることから、花粉症の人で口腔アレルギー症候群が発症しやすくなっていると考えられます。

●どんな食べ物で症状が出やすい?

リンゴやモモなどのバラ科の果物や、メロンやスイカなどのウリ科の果物で起きやすいとされています。
また、以下の図のように、反応する花粉の種類によって、口腔アレルギー症候群の原因となる果物や野菜は変わってきます。

●子供に発症は多い?

年齢層の幅は広く、大人になってから突然症状が出ることもあります。
また発症にも個人差もあるため、特定の食べ物で違和感があれば専門医の受診をお勧めします。

●対処法は?

根治療法は無く、症状の出た食べ物を避けることしかできません。
しかし、原因となるたんぱく質(アレルゲン)は熱や消化で変形し、発症しにくくなるため、加熱や加工で食べるなどの工夫を行うことで対処することが可能です。
症状が出た場合には、抗ヒスタミン薬が有効とされています。

いかがでしたでしょうか?
今回、「口腔アレルギー症候群」についてお話ししましたが、お口の粘膜の異常は、口腔アレルギー症候群以外にも病気が考えられます。
何かおかしいな?と思いましたら、お気軽に歯科医院にご相談ください。

歯科医師 奥村 知里

参考文献:「口腔アレルギー」治療法は.朝日新聞.2022-05-04.p.16.
https://www.tanijiri.com/specialty/oas
https://www.kyowakirin.co.jp/kahun/about/oas.html
https://www.jsaweb.jp/modules/stwn/index.php?content_id=14

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漂白(ホワイトニング)ってよく聞くけれど、何なの?

残暑がまだまだ厳しい日々が続いておりますが、秋の兆しも感じられるようになりました。
夜風が涼しく、朝晩の過ごしやすい気温が心地よい季節ですね。
この季節は、秋の味覚を楽しむと同時に、残暑の疲れを癒し、心身ともにリフレッシュすることが大切です。
美味しい秋の食材でエネルギーを充電して健康な日々をお過ごしください。

皆さんは、鏡で自分の歯を見て「前より黄色くなったなあ」「もっと歯が白くならないかなあ」と思ったことはありませんか?
今回は、歯の漂白についてお話ししようと思います。

漂白には、神経のない歯に行う➊「ウォーキングブリーチ」と、神経のある歯に行う➋「バイタルブリーチ」があります。
さらに、バイタルブリーチは歯科医院で実施する①「オフィスブリーチ」とご自宅で実施する②「ホームブリーチ」があります。
それぞれについてみていきましょう。

➊「ウォーキングブリーチ」

漂白剤を図のように歯の中に入れ、歯の内部から白くする方法です。処置後約1週間で再来院していただきます。
その間、継続して(歩いている間も)漂白されるため「ウォーキング=歩く」ブリーチと呼ばれています。
十分な白さになるまで、漂白剤の交換を繰り返します。3-4回される方が多いです。

適応症(できる方)
・根の先に膿が溜まって、根管治療した歯
・外傷(転倒や事故で歯をぶつけた)で歯髄が死に、変色した歯
・ある程度ご自身の歯が残っている歯

禁忌症(できない方)
・金属による変色
・無カタラーゼ症の方

➋「バイタルブリーチ」

バイタルブリーチには、①「オフィスブリーチ」②「ホームブリーチ」の2種類があります。

①「オフィスブリーチ」は歯科医院で行うもので、1回の治療時間は長いものの、その日のうちに白くすることができます。
漂白操作は歯科医師と歯科衛生士が行うので、口を軽く開けているだけで大丈夫です。

一方、②「ホームブリーチ」はマウスピースをご自宅にて装着する方法です。
毎日一定時間、マウスピースに薬剤を入れて装着していただきます。
利点として、漂白効果の持続時間が長い、自然な白さになりやすいという報告があります。

「オフィスブリーチ」「ホームブリーチ」には、下の表に示すような違いがあり、一概にどちらが優れているとはいえません。
そのため、オフィスブリーチとホームブリーチをどちらも実施する「デュアルホワイトニング」という方法もあります。

オフィスブリーチ
ホームブリーチ
実施者 歯科医師、歯科衛生士 患者様
場所 歯科医院 自宅
治療時間 約90分 1日約2時間×約14日
漂白操作 簡単 煩雑
使用する漂白剤の濃度 高い 低い
効果持続期間 やや短い やや長い
効果が出るまで 即日 1-2週間

適応症(できる方)
・加齢による変色
・軽度のテトラサイクリン歯
・軽度のフッ素症

禁忌症(できない方)
・表面に亀裂のある歯
・欠損が大きい歯
・無カタラーゼ症の方

漂白後の注意

・知覚過敏症
オフィスブリーチでは術直後、ホームブリーチでは開始数日後に歯がしみる症状が出ることがあります。
症状が出た場合、知覚過敏を抑制する薬剤を塗布したり、知覚過敏用の歯磨剤を使用していただいたりすることで収まる場合がほとんどです。

・歯肉の白色化
歯肉が漂白剤に触れることで、白くなることがあります。
数時間から1日程度で元の色に戻りますのでご安心ください。

・飲食物の制限
オフィスブリーチでは漂白後24時間、ホームブリーチでは漂白期間中歯に色が付きやすい状態となるため、色の濃いもの、ポリフェノールが含まれるものなどを避けて下さい。
また、しみやすいため酸性が強いものも避けて下さい。

・色の後戻り
白くなった歯が再度着色してしまうことで、半年から1年で起こることが多いです。
普段の飲食物や生活習慣で個人差があります。

そもそも、何故漂白で歯が白くなるの?

使用する薬剤に秘密があります。
皆さんは「過酸化水素」をご存じでしょうか。
濃度3%前後の過酸化水素水をオキシドールともいいますが、身近なところでは洗濯用漂白剤に含まれています。
この過酸化水素水は光や熱、アルカリ環境、触媒等で分解される過程で、ヒドロキシ(OH)ラジカルというものを生じます。

過酸化水素を歯に応用すると、このヒドロキシラジカルが有機化合物=汚れや着色を分解するため歯が白くなります。
そのため、漂白で歯が削れることはありません。

いかがでしたでしょうか。
ホワイトニングの細かな治療の手順や費用に関して興味のある方は、歯科医師、歯科衛生士までお気軽にお問い合わせください。

歯科医師 田代 憲太朗

(参考文献)
保存修復学21 第6版 永末書店
保存修復学 第7版 医歯薬出版株式会社
これで納得!デンタルホワイトニング 医歯薬出版株式会社

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上顎洞挙上手術とは
~サイナスリフトの有効性~

皆さま、こんにちは。
猛暑の厳しい日々が続く8月になりましたが、お元気でお過ごしでしょうか。
連日40℃に迫る暑さで疲れがたまり、熱中症や熱ストレスのリスクが高まっています。
適切な栄養の摂取と、こまめな水分補給、適度な休息を心掛け、お身体の体調管理に留意しながらお過ごしください。

歯を失うことでタンパク質の摂取量が減少することが報告されています(※1)。
虫歯や歯周病で歯を失った場合に、インプラント治療が有効であることは、近年では広く知られるようになってきています。
しかし、実際には歯を失った後の不十分な骨量が足りず、インプラント治療をあきらめざる得ない場合も少なくありません。
今回は、上あごの骨が薄い患者様のインプラント治療を可能にとする「サイナスリフト術」という治療技術についてお話しいたします。

インプラント治療は、チタンやジルコニアでできているネジ状の棒(「インプラント体」といいます)を顎の骨に埋め、この上部に人工の歯冠(「上部構造」)を取り付け失った歯を回復させる治療方法です。
他の歯を傷つけることなく、自然な形の歯を再現できる等のメリットがあります。

しかし、誰もが選択できる方法ではありません、骨の中にインプラントを埋入するためには、骨の十分な厚みや幅が必要になってきます。

歯を失った部分の骨は痩せて薄く細くなるため、インプラントを支える十分な骨の量を確保できなくなる場合があります。
特に上顎臼歯部(上あごの奥歯)では、骨の上には「上顎洞」と呼ばれる空洞(副鼻腔)があり、骨の厚みが薄くなる傾向が強く、通常のインプラント治療ができないケースが多くあります。
こうした場合に有効なのが、上顎洞底の骨の厚みを増加させる「サイナスリフト術」です。

サイナスリフトの目的

サイナスリフト術の目的は、インプラント体を埋入するため骨の厚みを確保することです。
上顎洞は空洞の外側を一層上顎洞粘膜(シュナイダー膜)で囲まれています。
サイナスリフトでその上顎洞粘膜を持ち上げて作ったスペースに人工骨を填入し骨の高さを増やし、インプラント体をしっかりと埋入できる骨の足場を築きます。

サイナスリフトの術式

この人工骨を填入する方法には、
➊ラテラルアプローチ
➋クレスタルアプローチ
と呼ばれる主に2つの方法があります。

この方法では手術による侵襲が大きくなってしまいますが、より多くの骨を作ることができます。
ラテラルアプローチは、以下のような場合に適しています。

・上顎洞の正面または後方からのアプローチが困難な場合。
・上顎洞の底部の骨量不足が比較的少ない場合に、骨を追加するための十分な領域がある場合。
・上顎洞の位置や解剖学的条件により、他のアプローチ方法が制約される場合。

この方法では、手術による侵襲がラテラルアプローチに比べ小さくすみますが、骨を多くつくることはできません。
クレスタルアプローチは以下のような場合に適しています。

・上顎洞の正面や後方からのアプローチが困難な場合。
・上顎洞の底部の骨量不足が比較的少ない場合に、骨を追加するための領域が制約されている場合。
・サイナスリフト手術の際に、骨増量を行いながらインプラントの挿入を同時に行いたい場合。

サイナスリフト術は上顎洞底粘膜を挙上するため、術後一過性に上顎洞炎の症状を起こすことがよくあります。
また、鼻閉や鼻出血の症状が出やすいので鼻をかむ等の上顎洞に圧力のかかる行為を行うと上顎洞底粘膜が破れる可能性があるので注意が必要です。

サイナスリフト術の効果

【1.骨の増加】
サイナスリフト手術により、上顎洞の底部に骨を追加することで、インプラント挿入に必要な骨の量を確保することができます。
骨量不足の場合、インプラントが適切に固定されず、成功率が低下する可能性があります。
サイナスリフトによって骨量を増加させることで、インプラントの長期的な成功率を向上させることができます。

【2.インプラントの安定性】
骨とインプラントがしっかりと結合(オッセオインテグレーション)することにより、咬合力や咀嚼力を支えることができます。
サイナスリフトによって骨量が増加することで、術後のインプラントの安定性を向上させることが可能となります。

【3.美容的な改善】
上顎の骨量が不足している場合には、歯茎の形が不均一になることがあります。
サイナスリフトによって骨量を増加させることで、歯茎の形態を回復することが可能となり、インプラントや補綴物の装着により、自然な歯の形状を取り戻すことができます。

【4.インプラントの適用範囲の拡大】
サイナスリフト手術によって骨量が増加することで、インプラントの適用範囲が拡大します。
骨不足が原因でインプラントが不可能とされていた患者さまに対して、サイナスリフトを行うことでインプラント治療の選択肢が広がります。

静脈鎮静法(セデーション)を併用すれば、リラックスして手術を受けることができます。

鎮静状態で手術を受けるため、不快感や痛みを最小限に抑えながら手術を受けることができます。
サイナスリフト手術は、口の奥の上顎洞(副鼻腔)の領域にアクセスする必要があり、時には一定の痛みや不快な感覚・拘束感を伴う事があります。
この様な不快感を予防し、手術時の不安を取り除く為に当院では、静脈鎮静法(セデーション)という点滴による麻酔を併用した手術を行っています。

麻酔専門医の管理下で鎮静剤・鎮痛剤を点滴投与することで、術中・術後に手術中の記憶が残ることはありませんので、安心して施術を受けていただけます。

手術後の注意点

・手術後は一時的に出血や腫れが起こることがあります。
・処方された鎮痛剤や抗生物質を指示通りに服用してください。
・手術部位に直接触れないように注意して歯磨きを行い、処方された口腔洗浄液でうがいをすることが推奨されます。
・傷口を刺激しないような注意をお願いいたします。
・手術後数日は、お食事は刺激の少ないものや柔らかいものをお摂りいただき、アルコールは控えてください。

サイナスリフト術は、今まで不可能だった部位へのインプラント埋入を可能とできるとても有用な治療方法です。
骨がないからインプラントをあきらめていた方、この治療に興味を持たれた方はご相談いただければと思います。

歯科医師 清原 秀一

参考文献
(※1)Iwasaki M, Yoshihara A, Ogawa H, et al.: Longitudinal association of dentition status with dietary intake in Japanese adults aged 75 to 80 years. J Oral Rehabil 43:737-744,2016.

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健康寿命と矯正治療

皆さま、こんにちは。
春の訪れが早く、桜の開花も昨年よりも6日も早く発表されました。
新型コロナウイルスを巡る規制緩和も広がり、通常とは言えないまでも3年ぶりにお花見が楽しめる機会が増えそうです。
まだまだ季節の変わり目ですので、体調を崩されないようにご自愛ください。

日々診療していると近頃、矯正治療を希望される成人の患者さんが増えてきたように感じます。
コロナ禍でのマスク生活では窮屈な生活を余儀なくされていましたが、口元をマスクで隠しているこの機会に、今まで二の足を踏んでいた矯正治療に踏み切る方が多いのではないかと思います。
そこで今回は健康寿命の側面からみた矯正治療の利点をお話したいと思います。
矯正治療は審美的な問題を解決することはもちろんですが、かみ合わせを治すことによって高齢になっても歯を残し健康寿命の延伸にもつながると考えられます。

健康寿命

2019年の平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳です。
一方、健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことをいい、2019年の健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳となっています。
平均寿命と健康寿命の差は10歳以上あり、健康寿命の延伸が生活の質の向上につながると考えられます。

皆さんは「8020運動」という運動はご存じでしょうか?
日本歯科医師会や厚生労働省が提唱している運動で、80歳になっても自分の歯を20本以上保とうという運動です。
高齢者になった時に自分の歯を残し健康な生活を送ること目的としています。
(提唱した当初(平成元年)には8020達成者は全体の10%に満たないとされていましたが、現在では50%以上が達成しています。)

8020運動

「80」は、提唱当時の日本人の平均寿命(平成元年)、「20」は「自分の歯で食べられる」ために必要な歯の数を意味します。
今までに行われた歯の本数と食品を噛む(咀嚼)能力に関する調査によれば、だいたい20本以上の歯が残っていれば、硬い食品でもほぼ満足に噛めることが科学的に明らかになっています。
食物を満足に噛めるということは健康寿命にも関係していて老後健康な歯が多いほど認知症や寝たきりになるリスクが低くなるとこが分かっています。

東京都文京区と千葉市で8020達成者を精査したところ、どちらの調査でも「不正咬合」である反対咬合と開咬がいなかったとの報告があります。
反対咬合や開咬は不正咬合の中でも特に奥歯に負担がかかるかみ合わせで、長年負担がかかっていると奥歯から喪失していき残存歯の減少につながると考えられます。

不正咬合

歯並びや噛み合わせの状態が良くない状態の総称。
歯の位置や歯列弓、上下の噛み合わせなどから起こり、放置すると日常生活に支障が出る場合がある。
正常ではない咬合(かみ合わせ)のことです。

不正咬合の種類

叢生(そうせい):歯がアゴに入りきらないでガチャガチャに生えている状態 歯がならぶ場所=骨の大きさとそれぞれの歯の大きさとの間のアンバランスでこのようになります。
歯みがきの時に歯ブラシが行き届かずに汚れが残りやすく、虫歯や歯周病の原因となります。

反対咬合(はんたいこうごう):下の歯が上の歯より前に出ている噛み合わせです。
上下の前歯の傾きに問題がある場合と下のアゴが大きすぎたり上のアゴが小さすぎることによる場合とがあります。

開咬(かいこう): 噛んできても、特に前歯が噛み合わない状態です。
前歯で食べ物をうまく噛みきることができないだけでなく、正しい発音ができないことが多いです。

上顎前突(じょうがくぜんとつ):上の前歯が強く前に傾斜していたり、上の歯ならび全体が前に出て噛んでいます。
また下のアゴが小さかったり、後ろにあることで見かけ上、出っ歯にみえることもあります。
この状態では、口を楽に閉じることができませんし、顔のケガで前歯を折ったり、くちびるを切ったりしやすいです。

矯正治療によって歯並びが良くなれば磨きやすくなり、歯を失う2大要因である、虫歯や歯周病のリスクを下げることができると考えられます。
また、上顎前突による前歯の破損のリスクを下げることや反対咬合や開咬のような奥歯に負担がかかるような不正咬合を改善することによって高齢者になった時の歯の喪失のリスクを下げることが期待できると考えられます。
歯並び、噛み合わせを治すことは歯の健康を保ち、高齢者になった時に健康な歯で物を食べられることによって、健康寿命の延伸にも深く関わってくると考えられます。
もちろん矯正治療にはメリットだけではなくデメリットもあり、矯正治療をはじめるためには詳細な検査をして個人個人にあった治療方針をたてて進めていく必要があります。

そろそろマスク生活も終わりが来そうな時期にはなってきましたが、この機会に一度ご自身の歯並びに関して歯医者に相談してはいかがでしょうか。

矯正歯科医 片岡 烈

(参考文献)
・日本矯正歯科学会HP
・e-ヘルスネット(厚生労働省)

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イオンチャネル

こんにちは。
梅の香に心和む季節となりました。
本格的な春の訪れが待ち遠しく感じます。
朝晩はまだ冷え込みが厳しいので、体調管理にお気を付けてお過ごしください。

私は現在、大学院歯学研究科で歯科研究に従事しています。
主な研究分野はイオンチャネルについてです。

イオンチャネルは、生体にとって欠かせない存在です。
「脳は電気信号で情報を伝えている」という話を聞いたことがあると思いますが、この電気信号を作り出すのがイオンチャネルです。
今回は、そんなイオンチャネルについて、

1.イオンとは
2.細胞について
3.イオンチャネルとは何か
4.イオンチャネルの生体内での役割
5.イオンチャネル研究の医療への応用

の5本立てでお話していきます。

【1.イオンとは】

イオンとは、簡単に言えば、電荷を帯びた原子のことです。
身近な例では、食塩(NaCl)を水に溶かすとNa+(ナトリウムイオン)とCl-(塩化物イオン)に分かれますが、このNa+とCl-がイオンです。

生体内にもイオンは存在していて、Na+(ナトリウムイオン)、Cl-(塩化物イオン)、K+(カリウムイオン)、Ca2+(カルシウムイオン)、HCO3-(重炭酸イオン)などの多くのイオンが含まれています。汗がしょっぱいのは、汗にナトリウムイオンが含まれているからです。
イオンの化学式には右上に小さく+(プラス)と-(マイナス)がついています。
+が付いているイオンはプラスの電荷を帯びている「陽イオン」、-がついているイオンはマイナスの電荷を帯びている「陰イオン」ということです。

また、イオンなどの物質は、多い方から少ない方に移動する「拡散」という性質をもっています。
食塩を水に溶かしたとき、かき混ぜなくても均一に広がりますが、これが拡散です。

【2.細胞について】

細胞は動物を構成する最小単位です。
人の身体は約37兆個の細胞で構成されていると言われており、多種多様な細胞が体中のあらゆる臓器に存在しています。
例えば、心臓を動かす心筋細胞、感覚を伝える神経細胞、骨を維持する骨細胞など、形も機能も様々です。

細胞は、細胞膜により細胞の中と外に区切られています。
細胞の中と外は液体で満たされており、細胞の外側に存在する液体を「細胞外液」、細胞の内側に存在する液体を「細胞内液」といいます。汗や血液(血漿)は細胞外液です。
細胞外液はナトリウムイオン(Na+)、カルシウムイオン(Ca2+)、塩化物イオン(Cl-)の濃度が高く、細胞内液はカリウムイオン(K+)の濃度が高いという特徴があります。

(イオンの濃度を文字の大きさで表現しています。)

普段は、これらのイオンが細胞膜を通り抜けて移動することはありません。
しかし、ある条件下ではイオンは細胞の中と外を行き来することができるようになります。このときのイオンの行き来に必要となるのがイオンチャネルです。

【3.イオンチャネルとは何か】

イオンチャネルは、細胞膜に存在するタンパク質です。開閉する穴を持ち、細胞膜を貫通しています。
普段は、イオンが細胞の中と外を行き来することはありません。
しかし、イオンチャネルが開くと、穴を通ってイオンが細胞の中と外を行き来することができるようになります。

また、イオンチャネルには、特定の刺激によって開くという性質があります。
例えば、温度感受性イオンチャネルは、細胞外の温度変化によって開くイオンチャネルです。

さらに、イオンチャネルは特定のイオンのみを選択して通す性質があります。
例えば、ナトリウムイオンチャネルは、ナトリウムイオンのみを通すイオンチャネルで、それ以外のイオンは通しません。

つまり、イオンチャネルは、ある刺激に反応して特定のイオンを細胞の中に入れる(あるいは細胞の外に出す)ゲートのようなものです。
私が初めてこの話を最初に聞いたときは、駅の改札機みたいだなと思いました。
では、細胞の中にイオンが入ってくることは、生体にとってどのような意味があるのでしょうか。

【4.イオンチャネルの生体内での役割】

刺激によりイオンチャネルが開いて細胞の中に陽イオンが入ってくると、細胞の中はプラスの電荷が増え、それが電気信号となり情報を伝えます。
冒頭でもお話した、脳の電気信号、その正体はイオンチャネルによる細胞へのイオンの出入りだったのです。
しかも、その電気信号は脳だけではなく、体中のいろんな臓器(細胞)で生じています。
例えば、心筋細胞に電気信号が生じると心臓を動かし、神経細胞に電気信号が生じると感覚などの情報を脳に伝え、骨細胞に電気信号が生じると骨を作ります。

【5.イオンチャネル研究の医療への応用】

では、イオンチャネル研究は医療の分野でどのように応用されているのでしょうか。
イオンチャネル研究は、例えば、医薬品の開発に応用されています。
様々な医薬品がイオンチャネルの働きを制御する作用を持ちます。
また、既知の医薬品が今まで知られていなかったイオンチャネルに作用していたことが判明したという報告もあります。

全て列挙するとキリがないので、身近と思われる例を1つあげます。
皆さんは、歯の治療をするときに麻酔の注射を打ったことはありますか?
実は、この麻酔の注射薬はイオンチャネルを標的にした薬です。
この薬は、神経細胞のナトリウムイオンチャネルを開かなくする作用があります。
ナトリウムイオンチャネルが開かなくなると、刺激をされても神経細胞の中にナトリウムイオン(陽イオン)が入らないため電気信号にならず、痛みの情報が伝わらないので痛みを感じなくなります。


ここまで、イオンチャネルについて簡単にお話しましたが、本当はイオンチャネルの厳密なメカニズムはもっともっと細かく、未だに理解されていない部分も多いです。
この記事が少しでもイオンチャネルの理解に、ひいては医学の理解につながれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

歯科医師 倉島竜哉

【参考文献】
・基礎歯科生理学 第7版 医歯薬出版株式会社
・カンデル神経科学 エディカル・サイエンス・インターナショナル
・ニューロンの生物物理 第2版 丸善出版

図はhttps://smart.servier.com/より作成

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口腔機能の低下症とは

皆さま、こんにちは。
日々厳しい寒さが続いておりますが、暦の上では少しずつ春が近づいてきているようです。季節の変わり目で体調を崩される方も多いと思いますので、うがい手洗いなどをしっかりして、体調管理にお気をつけてお過ごしください。

お口の健康に対しての関心が薄くなり、歯磨きの回数や時間が減ったり入れ歯やかぶせ物の不調を放置していると、知らない間に虫歯や歯周病が進行し、歯を失ってしまいます。
歯の本数が減ることで、お肉や硬い野菜を食べることが難しくなりその結果、タンパク質を主とした栄養不足が生じ全身の健康にも影響が生じます。
今回は、食事において重要な口腔の機能が低下していく「口腔機能低下症」についてお話させていただきます。

●口腔機能低下症とは

口腔機能低下症は、口腔の機能(食べたり飲み込んだりする機能、唾液を分泌する機能、話す機能など)が複合的に低下していく症状です。
口腔機能低下症は近年病名がつけられ、こうした名前で認識されるようになったのは、歯科の世界でもかなり新しいものです。

●口腔機能低下症の原因

まず主な原因として考えられるものは「加齢」です。
口腔内の感覚や、食べたり飲み込んだりする機能(摂食嚥下機能)、唾液を分泌する機能などは加齢とともに徐々に低下していくため、そうしたひとつひとつが、口腔機能低下症の症状を起こしていきます。
また、虫歯や歯周病、合わない義歯の使用なども、口腔機能低下症の症状の原因となり、日ごろの歯みがきなどのケアが行き届かないと、口腔内の環境が悪くなっていきます。
それ以外にも、全身疾患や薬の副作用なども関係してきます。
つまり口腔機能低下症は、さまざまな要因が複合的に影響しており、口腔機能は、日常生活や自身の体調と密接に結びついているのです。

●こんな症状がみられたら、口腔機能低下症かも?


 

「硬い物が以前に比べて食べにくい」「食事に時間がかかる」といった症状に最近心当たりはありませんか?
「年だから仕方がないこと」と思いがちですが、加齢変化による口腔機能の低下は、徐々に進行していくため、自覚症状に乏しいのが一般的です。

●検査方法

検査の項目は7つあります。(表1)

簡単に検査内容をそれぞれ説明すると、まずは口腔内の衛生状態の確認として、舌苔といわれる、舌に付着している汚れ(図1)の量を測定します。
また、口腔内の乾燥具合を確認し、測定方法としては、口腔水分計(図2)で湿り気を測ったり、ガーゼを噛んで唾液の量を測定したりします。
他にも、嚙む力や歯の本数の確認や、舌や唇の運動機能の検査、舌圧(舌が上顎の間に接する力)を測定します。(図3)
さらに、食べ物が上手に噛めているかの咀嚼機能の検査や、うまく食べ物を飲み込めるか、飲み込みに時間がかかっていないかどうかなどの質問に答えていただいて、嚥下機能を評価します。
これら7つの検査のうち3つ以上に問題があるようであれば、口腔機能低下症の診断となります。

●最後に

口腔機能低下症は原因の部分でもお話したように、加齢だけでなく、虫歯や歯周病、合わない義歯の使用、日ごろの歯みがきなどのケアが行き届いていないことも原因として考えられています。
口腔機能低下症を防ぐためにも、また、口腔機能低下症の早期発見のためにも、定期的に歯科医院で口腔内のチェックをさせていただき、一緒に、食べることや人との会話の楽しさを守っていきましょう。

歯科医師 奥村 知里

参考文献
一般社団法人日本老年歯科医学会https://www.gerodontology.jp/committee/001190.shtml
https://www.jads.jp/basic/pdf/document_02.pdf
https://www.life-qol.net/mucus
http://orarize.com/pdf/catalog.pdf
よくわかる高齢者歯科学

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「Tooth Wear (トゥース・ウェア)」とは~歯を失う様々な要因と予防のお話~

皆さま、こんにちは。
早いものでもう師走となり、街は色とりどりのクリスマスイルミネーションが目を楽しませてくれる季節となりました。
寒さが日ごとに増し、今年はインフルエンザが流行りそうとの声もありますので、体調崩されぬようお気を付けてお過ごしください。

さて、今回はむし歯以外で歯を失う原因についてお話しをさせて頂こうと思います。
「tooth wear」という疾患をご存じでしょうか。
toothは歯、wearはすり減り・薄くなるといった意味で、日本語にすると「歯の損耗」となります。
tooth wearの中には ①くさび状欠損 ②咬耗症 ③摩耗症 ④酸蝕症 が含まれています。それぞれについて解説させて頂きます。

①くさび状欠損
むし歯の次に多い歯の硬組織(エナメル質、象牙質、セメント質)疾患です。
エナメル質および象牙質が欠けてしまった状態で、上の奥歯の歯と歯ぐきの間に見られることが多いです。
原因は強い咬合力、もしくは歯ブラシを強く当てすぎであることがほとんどです。
知覚過敏症を併発している頻度も高いため、知覚過敏かと思ったらくさび状欠損もあった、というケースもよく目にします。

治療は、大きな欠けであればセメントやレジンで埋めますが、小さくて症状が無ければ処置は不要です。
ただ、原因を取り除かなければ悪化する可能性があるので、咬合力が強いのであればナイトガードを作り、歯磨きが原因であれば正しいブラッシング方法のご説明を行います。

②咬耗症
歯と歯、もしくは歯と食べ物の接触により歯のかむ面がすり減る疾患です。

固い食べ物強い咬合力、粗造な詰め物やクラウン等が原因とされていますが、病的でなくとも年を重ねれば大抵の方がこの状態になっています。

治療は大きくすり減っていればレジンで埋めますが、小さくて症状が無ければ治療は不要です。
また、ナイトガードを装着し、進行の予防を行うこともあります。

③摩耗症
咬耗症と似ていますが、咬合以外の力で歯がすり減る疾患です。
不適切な歯ブラシや、入れ歯の着脱時にばねの部分がこすれるといったことが多くの原因です。
パイプを常用される方や、管楽器を演奏する方にも起こることがあります。

治療は原因の除去が基本となります。

④酸蝕症
酸性の飲食物を多量摂取することで、歯が溶ける疾患です。

炭酸飲料やジュース、ワイン等はエナメル質が溶け始めるpHを超えてしまっているため、常飲すると酸蝕症の原因となります。

ただ、唾液には緩衝能といってpHを一定に保とうとする働きがあるため、これらのものを飲食したからといってすぐに歯が溶けるわけではありません。
ですが、お口の中に残留している時間が長い程、酸蝕症のリスクが高くなります。

そのため、予防として飲食後は可能であれば歯磨き、無理であれば口をゆすぐ習慣を付けて頂くと、リスクを下げることができます。

ここまでtooth wearの4つの疾患を説明させていただきましたが、いかがだったでしょうか。
恐らく、多くの方が大なり小なり当てはまっていたかと思います。
必ずしも治療が必要な病気ではありませんが、気になることがございましたらお気軽にご相談下さい。

歯科医師 田代 憲太朗

(参考文献)
保存修復学21 第六版 永末書店
飲食物で歯が溶ける?!酸蝕から歯を守ろう! クインテッセンス出版株式会社
保存修復学 第7版 医歯薬出版株式会社

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