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アーカイブ: 4月 2022

顎の病気~特発性下顎頭吸収~

こんにちは。
4月も下旬になりを過ぎ夜は肌寒い日もあり、日中は汗ばむような陽気の日も増えてきましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
季節の変わり目や環境の変化、精神的なストレスにより、無意識に食いしばってしまい顎が痛くなりやすい時期でもあります。

さて、今回はそんな顎に症状を呈する病気「特発性下顎頭吸収」についてご紹介させていただきます。
今まで分からない事が多かった疾患ではありますが、少しずつ研究が進み原因が解明されています。
また、この病気に関連する疾患についてもこれを機に皆様にお伝え出来ればと思っております。

・特発性下顎頭吸収とは

成長期にも関わらず下顎頭の著しい吸収・変形が生じ、下顎枝窩の減少が生じる極めて稀な病態です。
無痛性に進行することが多く、下顎枝高径の短縮に伴う下顎骨の後退や二次的全歯部開咬が顕著になって初めて歯科を受診することも少なくないです。

2009年に難治性疾患に認定され、発生機序や原因については不明な点が多いですが、下顎頭吸収の進行を回避し重症化を防ぐためには、突発性下顎頭吸収を正しく鑑別する知識と検査体制の確立が不可欠です。

・原因

未だ不明な点が多いですが、性別、年齢、ホルモン異常などの内的因子に加え、顎離断術、顎顔面外傷、顎関節円板障害、口腔習癖などの外的因子が必須条件になっていることが明らかになってきています。

・内的因子

10代、20代の女性に多く発現します。
特発性下顎頭吸収の発現に関する重要な因子として17βエストラジオール(エストロゲンを構成する主要成分の一つで妊娠、出産との関わりが強い)の血中濃度の低下が挙げられます。
さらに、女性の顎関節にはエストロゲン受容体が多く存在し、エストロゲンの分泌低下が関節組織に負の影響を与えている可能性があると言われています。

・外的因子

特発性下顎頭吸収の発症に関連が深い外的因子には、外科的矯正治療経験、顎顔面外傷、顎関節円板障害、口腔習癖などが挙げられます。
外科的矯正経験については、下顎頭吸収を発症した患者の多くが顎離断術を経験しています。

~顎関節疾患~

特発性下顎頭吸収以外にも顎関節に症状を呈する疾患はいくつかあります。
外傷や炎症、腫瘍、顎関節症がありますが、今回は内的因子やホルモンに関係のある先天障害・発育障害についてご紹介させて頂きます。

【先天障害・発育障害】

①無形成、減形成
顎関節の無形成または減形成は、下顎の減発育または不全発育の一症候です。
隣接する器官(中耳、外耳、下顎骨)の形成不全も合併して発現することが多いです。

②第一・第二鰓弓症候群
第一鰓弓と第二鰓弓由来の骨と軟組織の異常を主な症状とする先天性の形成異常症候群です。
症状の現れ方に程度の差があります。
ほとんどが片側性で、下顎骨の減形成、顎関節の形成不全、咬筋・側頭筋の形成不全、表情筋の麻痺が見られます。
耳介の変形、すなわち小耳症、副耳が見られます。

③Treacher-Collins症候群
第一鰓弓由来の器官の発育不全による障害です。
上顎骨、頬骨ならびに下顎骨の発育不全が見られます。
これに伴って顎関節突起、筋突起の形成不全が現れます。
さらに合併症として眼瞼および耳介などの変形が出現します。

④Goldenhar症候群
眼球類皮腫などの眼の異常を伴った第一・第二鰓弓症候群の亜型で、脊椎の奇形を合併します。

⑤関節突起肥大
下顎頭の後天性の過剰発育で、非腫瘍性病変です。
原因不明で、外傷、脱臼または炎症などが刺激因子になると考えられています。
関節突起肥大は片側性に発症し、患側の下顎の伸長により咬合不全ならびに顔貌非対称となります。
顎関節に雑音、仏痛、下顎頭の運動障害に起因する開口障害が現れることがあります。

【顎関節の外傷】

①外傷性顎関節炎
下顎骨に衝撃的な外力が負荷され、下顎頭に強い外力が及ぶと顎関節の軟組織構造が炎症状態を引き起こすことがあります。
顎関節の自発痛または運動時として自覚され、仏痛に伴う防御反応によって開口障害が起こります。
下顎の健側偏位によって咬合不全が生じます。

②顎関節脱臼
過剰な関節運動の結果、骨性構造が関節の可動範囲を逸脱し、復位出来ず偏位状態で固定することをいいます。
顎関節では下顎頭の過剰な前方滑走運動によって関節隆起を前方に逸脱し復位できなくなり開口状態となり固定した状態、いわゆる顎が外れた状態です。

脱臼しやすい解剖学的な特徴があると発生しやすいと指摘されています。

③関節突起骨折
関節突起部に発生する骨折の下顎骨骨折全体に占める割合は比較的大きいです。
関節突起骨折では、オトガイ部など下顎の他部位に作用した外力が伝導し二次的に関節突起が骨折する頻度が高いです。

【炎症性病変】

①化膿性顎関節炎
下顎骨炎または骨髄炎からの波及により化膿性顎関節炎が発症することが多いです。
全身症状として、発熱、頭痛、全身倦怠などが現れます。局所症状としては、耳前部の自発痛、特に顎運動時の痛みが強いです。
進行すると外耳道部に瘻孔を生じ、排膿することがあります。
関節腔に膿や浸出液の貯留がみられたり、関節内組織の浮腫性腫脹によって下顎頭が前方に押し出され、下顎全体が健側へ偏位するので咬合不全の状態となります。

②リウマチ性顎関節炎
全身の関節に炎症性病変が急性期と慢性期を反復し、長期にわたって関節構造が徐々に破壊される病変です。
全身的な結合組織の炎症性疾患として顎関節にも症状を現します。
顎関節の運動痛、顎関節部の圧縮が見られます。また、咀嚼筋群のこわばり感が現れます。
下顎頭の変形、骨の破壊、吸収、萎縮が現れ、開口障害が顕在化し、晩期においては顎関節強直症の状態となります。
下顎頭の吸収破壊に伴って下顎が後上方へ偏位して前歯部開咬などの咬合不全を示すことがある。
全身的には、発熱、全身倦怠、食欲不振、体重減少がみられます。

③変形性顎関節症
顎関節の関節円板および下顎頭関節面の繊維軟骨構造、関節隆起関節面の繊維軟骨様構造の破壊が生じる病変です。
日本では、本疾患を顎関節症Ⅳ型に分類されています。
この疾患は加齢に伴う軟骨や骨の代謝低下、低位咬合による慢性の外傷性因子などが増悪因子とされています。
顎運動時の顎関節雑音(クレピタス音)、関節痛並びに開口障害が主な症状となります。

・最後に

特発性下顎頭吸収は、発症要因についても危険因子についても未だ不明な点が多く、早期発見につながるような診断基準はありません。
また、発症後の対処法として、どのような治療法が最善であるかについても統一した見解はありません。
しかし、歯科を受診することで早期発見が出来ますので歯科検診にいらして下さい。

歯科医師 瀬津昂斗

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