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アーカイブ: 12月 2020

歯周病と認知症

皆様こんにちは。
日増しに寒さが身にしみるようになって来た今日この頃ですが、いかがお過ごしでしょうか。
イルミネーションの点灯も始まりましたが、今年は新型コロナウイルス影響で見に行くことも憚られる状況になっています。
お家でのクリスマスや、年末年始の楽しみ方を模索するのも新しい日常なのかもしれません。

さて、つい先日歯科界を賑わせた歯周病と認知症についての新しい発見がありましたので、今回ご紹介させて頂きます。

『歯周病と認知症』

この新しい発見というのは、「歯周病とアルツハイマー型認知症との病理的関連性」についてです。
数年前から既に歯周病とアルツハイマー型認知症には関連性があると言われてきていたのですが、今回、九州大学と中国北京理工大学との共同研究により、更に深い因果関係が解明されたのです。
認知症や歯周病はよく聞くと思いますが、どのような病理により生じる病気なのかについて簡単に説明させて頂きます。

『認知症とは・・・』

アルツハイマー型認知症では、脳が少しずつ萎縮していき認知機能が低下していきます。
認知症の約7割がこのアルツハイマー型であると言われています。
アルツハイマー型認知症で見られる症状には、中核症状と周辺症状の2種類があります。

①中核症状(認知症になると必ず起こる症状)
・記憶障害・判断力低下・見当識障害・実行機能障害

②周辺症状(認知症になっても必ず起こるとは限らない症状)
・不安・抑うつ・妄想・せん妄・睡眠障害・幻覚・徘徊・暴力・失禁

アルツハイマー型認知症では、年単位の時間をかけて徐々にこのような症状を来すのです。
アルツハイマー型認知症の特徴的な病変として、脳の萎縮により生じる脳老人斑と呼ばれるものが見られます。
この脳老人斑の成分であるアミロイドβ(Aβ)はタンパク質の一種で健康な人の脳にもありますが、通常であればそのまま分解・排出されます。
しかし、正常なAβより大きいと排出されず脳内に蓄積されます。
この蓄積されたAβは、記憶の役割を持つ脳細胞を死滅させると考えられています。
このAβは20数年という長い期間をかけ脳内に蓄積し、アルツハイマー型認知症を発症します。

認知症の診断方法として現在、長谷川式認知症スケールやミニメンタルステートなどの口頭での簡単な質問をする検査が行われています。
この他に、CTやMRIといった画像検査もあります。
これらの検査は医科にて行われていますが、歯科を受診した患者様で「入れ歯をよく紛失する」「予約日をいつも間違える」などの認知症の初期症状を疑い、医科へ紹介するケースもよくあります。

『歯周病とは・・・』

歯周病(歯槽膿漏)とは、口腔内の細菌感染によって歯茎が炎症を起こし、赤くなったり、腫れたりする病気の総称です。

歯周病が進行するとこのPg菌が口腔内の糖から酸を産出し、歯を支える骨(歯槽骨)を溶かし、歯の動揺や歯ぐきからの出血や排膿といった症状を呈します。

口腔内には様々な細菌がいます。
歯周病の原因菌はこのうちの1つの菌である「Porphyromonas gingivalis(Pg菌)」です。

『研究結果』

このPg菌が認知症に強く関与しているのです。

今までの研究において、「Pg菌がAβ産生を誘発する」ということまでは分かっていました。
しかし今回の研究では、Pg菌はAβを作りやすくするだけではなく、全身に感染することで「Aβが脳内に取り込まれる」ということが解明されたのです。
研究内容としては、生理食塩水を投与したマウスとPg菌を3週間投与したマウスを用い、それぞれの脳に注目し比較します。
すると、Pg菌を投与したマウスの脳血管内皮細胞において、Aβと結合しAβを脳内へ取り込む役割を持つRAGEという受容体が2倍増加すると共に、周囲の脳実質内にAβが10倍増加し、記憶障害が誘発されたのです。
この研究から、歯周病とアルツハイマー型認知症との新たな関与メカニズムを示唆されました。
歯周病の予防・治療によりPg菌を体内から減らすことがアルツハイマー型認知症の発症・進行を遅らせることができることが分かり、口腔ケアによる認知症予防が大きく期待され始めています。
認知症の7割を占めるアルツハイマー型認知症には根本的な治療法が確立されていないため、発症を遅らせる方法の一つである「口腔ケア」は今後ますます、有効な予防手段として重要視されてくることと思います。

『口腔ケアの重要性』

歯周病は、認知症の他にも糖尿病、心筋伷塞、メタボリックシンドローム、誤嚥性肺炎などにも関連性があると言われています。
歯周病だけでなく、これらの全身疾患の予防のためにも早い段階での歯科医師や衛生士による定期検診・クリーニングが重要となってきます。
世間では未だ新型コロナウイルスへの不安が強いですが、私達もより一層の感染予防対策を行い患者様への診療に従事して参りますので、一緒に口腔及び全身疾患の予防をしていきましょう。

歯科医師 瀬津昂斗

参考文献:九州大学研究成果サイト
https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/466
「臨床歯周病学 医歯薬出版 第二版」
「口腔内科学 永末書店 第二版」

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