長津田でおすすめ評判の歯医者・みなみ台歯科クリニックの口コミ・評判

低フォスファターゼ症と乳歯

厳寒の候、皆様お変わりなくお過ごしでしょうか。
昨年来、新型コロナウィルスにより新しい生活様式への適応を求められ自粛を余儀なくされておりますが、ワクチン接種が始まったことで少しずつ状況緩和への見通しが立ってきているように感じられます。

この状況が一日でも早く終息へ向かいますことを心からお祈り申し上げます。

さて皆様は『低フォスファターゼ症(HPP)』という病気をご存じでしょうか?
体内のアルカリフォスファターゼ(以下ALP)という酵素が正常に働かなくなることで
骨や歯が弱くなるのが特徴的な遺伝子の病気です。
日本においての重症の方は15万人に1人ほどで症状の軽い方を含めると5万人に1人の発症率と言われています。

(ALEXION_読売新聞記事_180627 (hpp-life.jp)

〇低フォスファターゼ症の病型(発症時期と特徴)

低フォスファターゼ症とはお母さんのおなかにいる頃から発症する方もいれば成人になってから発症する方もおり発症年齢は様々です。
体の骨が弱い為に生きることが難しい重症の方からほとんど無症状のまま過ぎる方まで重症度もおいても様々です。
こうした発症時期や重症度によって現在6つの病型に分類されています。

1.周産期重症型 最も重症な病型で、出生時に四肢短縮、頭囲の相対的拡大、狭い胸郭を認める。X線で、全身骨の低石灰化、長管骨の変形、などを認める。
2.周産期軽症型:骨変形などから胎児期に診断された低フォスファターゼ症症例のなかに、良好な骨石灰化を認める予後良好な病型。日本人例では、ALP遺伝子F310Lとの関連が指摘されている。
3.乳児型: 生後6か月までに発症する。乳児期に死亡する症例もある予後不良な病型である。
4.小児型:小児期に発症するタイプで重症度はさまざまである。乳歯の早期喪失を伴うのが特徴である。(生後6か月から15歳くらいの発症)
5.成人型:成人期おもに中年期になってから発症するタイプで病的骨折、骨痛によって気づかれる。
6.歯限局型:骨に病変が限局するタイプである。乳歯の早期脱落などを認める。 

参照https://www.shouman.jp/disease/details/15_02_005/ 

〇歯への影響

今回は歯に異常が出ることを特徴的とする小児型、歯限局型にクローズアップしてご紹介させていただきます。
通常乳歯は生後6~8か月で生え始め、3歳前には20本の歯が生え揃います。
その後、6歳以降から永久歯が生え始めおおよそ12歳には28本の永久歯が生え揃います。つまり6~12歳が生え変わりの時期となります。
ところが低フォスファターゼ症の場合、4歳前に乳歯が抜けてしまうことがあります。
歯の抜け方としては、通常であれば乳歯の根が吸収されて抜けてきますが、根ごと抜けてしまうのが特徴です。

乳歯が早期にぬけてしまった場合、以下の問題点が挙げられます。

✓ 歯並びや咬み合わせ
乳歯は永久歯が生えてくるスペースを確保する重要な役割があります。
乳歯が早期に抜けてしまった場合永久歯の歯並びや咬み合わせに影響が出ます。 

✓食べる、話す
乳歯が早期に脱落してしまうと食事や発語機能の獲得時期に影響を及ぼします。

✓見た目
歯がないという見た目の問題に対する心理的な問題がでてきます。

〇治療法

現在では残念ながら歯の早期脱落に対する根本的な治療法は確立されておりません。
その為グラグラしている歯はできるだけ長持ちできるよう歯肉の状態を良好に保つ歯周治療を行います。
また抜け落ちてしまった乳歯の部位に対しては3歳過ぎから義歯(入れ歯)を作り問題点の改善をはかります。
しかし自分の歯と同じよう噛むことは難しく、また歯がないことでからかわれたり、頑張って義歯をしようしているのに嫌な思いをする可能性もありお子さんが入れ歯を受け入れるまで時間がかかるなど課題があります。

低フォスファターゼ症そのものの治療としては、2015年からALP(アスホターゼアルファ 商品名:ストレンジック)を注射で体内に補充する『酵素補充療法』が日本で認可され根本的な治療として行うことができるようになりました。
ストレンジックによる治療は欠乏したALPを補充し、酵素濃度上昇と骨の石灰化障害を改善しそれによる重篤な骨格および重篤な病態と早期死亡を予防することを目的としています。
高価な治療となりますが、小児慢性特定疾患に指定されているため医療費助成制度が利用できます。
指定医が医療費助成の申請を行うことになっていますので、我々歯科医は小児科医と連携し治療を進めていく必要があります。

生きることができる病気になったからこそ、お子さんの歯の問題がより一層重要視されるようになりました。

〇まとめ

今後の課題として乳歯がなぜ早く抜けてしまうのかを明らかにし治療法を確立する必要があり現在日本においても世界に先駆け、研究が進められています。
低ホスファターゼ症の子どもたちへの先進的な歯科治療法の開発を(大阪大学大学院歯学研究科 小児歯科学教室・顎顔面口腔矯正学教室 2020/01/20 公開) – クラウドファンディング READYFOR (レディーフォー)

もし乳歯が早期に抜けてしまった場合は抜けた歯をご持参の上歯科を受診ください。
低フォスファターゼ症は進行性の病気であるため最初は歯に限局した症状がみられていても徐々に全身に現れる可能性があります。
その為歯の症状から早期に問題を発見し、定期検診を行うことで成長発育の管理をしていく必要があるのです。

歯科医師 小松リナ

  カテゴリ:未分類